雪のとなりに、春。

片手に持っている白いボードに、白い絵の具……に似たようなものを絞り落としていく色相環。

ただ絞り出されただけの白は、ツヤツヤと光を反射して雲と呼ぶには輝きすぎていて、雪と呼ぶにはあたたかい色の白。

直径3センチくらいの口から絞り出されるそれは、彼の手によってもこもこと盛られていった。


「ちょ、ちょっと、出し過ぎじゃない? そんなに使うの?」


見たことのない量が目の前に絞り出されて、あたふたしてしまう。
色相環はわたしの声に対してこくんと頷いてから、やっとキャップを閉めた。

それからナイフのようなものでそのもこもこをすくい取り、四等分に綺麗に分けた。


「はい」

「え?」

「これに奏雨が絵の具落として」

「え、この白いのに?」

「そう。綺麗な色になるよ」


渡された絵の具を受け取る。
薄いピンクと、淡い水色と、濃い青。
これがわたしが選んだ絵の具たち。

まずは水色の絵の具を開封し、白のもこもこの上に持ってくる。

……困ったわ。どれくらい落としたらいいのかわからない。

ちらっと色相環を見ても、ただ微笑まれてしまった。
「奏雨の好きにしていいんだよ」と言われているようで、少しムッとする。

確かにわたしより年上だけれど、そんなに子供扱いしなくたっていいじゃないの。

なによ。わたしが1人じゃなにも選択できない、何も決められない人間だとでも言いたいわけ?


「……っ」


少し指に力が入ったせいで、水色の絵の具がとろりと垂れるように白の上に落とされた。

生クリームの上に垂らしたチョコレートソースのように薄く細く広がって、それだけでほうっと見惚れてしまいそうになる。