雪のとなりに、春。

***

「ここが俺のアトリエ」


自慢げな彼に通された部屋は、意外と広々としていた。

無造作に立てかけられているキャンバスには、様々な絵が描かれている。
これも全部、彼の作品なんだろうか。

今日感じた画材屋と似た雰囲気に、またも入り口から先に進めなかった。

彼は慣れたようにブレザーを脱いで、壁に掛けられていた丈の長いエプロンを身につける。
肘より上にワイシャツの袖をまくると、やっとわたしに視線をよこした。


「奏雨も、ブレザー脱いで」

「えっ!?」

「絵の具ついたら大変だろ?」

「……べ、別に、変なこと考えてた訳じゃないから!!!」

「俺なんにも言ってないんだけど」


変に勘違いしてしまった自分が恥ずかしくて、下を向く。
さっさとエプロンを着て、腰に手を回して紐を結んだ。


「奏雨、縦結びになってる」

「え……!?」


見かねた色相環は、仕方ないなとわたしの後ろに立って、エプロンの紐を結び直してくれた。

距離が近くて、いつの間にか呼吸が止まってしまっていたことに気付く。
それでもなんだか息を吐けなくて、そのせいもあって胸がぎゅっと苦しくなった。

知らない、知らない。

だってこんなの、奈冷といた時は感じなかったもの。


「よし、できた」