雪のとなりに、春。

「その2」?
雪杜くんならそこにいるのに、どうしてわざわざ私に?

返答に迷っていると、カチャリとベルトを締める音が聞こえたのを合図に手をどけた。

皐月さんはすでに玄関で外靴を履いているところだった。

スニーカーに足がきちんと収まるようにトントンとつま先を軽く地に着けている。

それからちらりとこっちを見ると、にこっと笑って。
顎にかけていたマスクを鼻まで覆うように引き上げて。

「んじゃね」と手を振って、そのまま出て行ってしまった。


「…………」


私は、なにを、ボーッと見つめてしまっていたんだろう。
気を抜くと皐月さんの綺麗な顔やひとつひとつの動きに見惚れてしまう。


「……花暖先輩」


あとから雪杜くんがリビングから追いかけてきたけれど、珍しく私の頭の中は雪杜くん以外のことでいっぱいになっていた。


「ま、待って!!」

「!?」


突然出された大きな声に、雪杜くんはびくりと肩を震わせた。

私はさっき揃えたローファーを履いて、慌てて玄関を飛び出す。

皐月さんは足が長いので、ただ歩いているだけなのにあっという間に距離が開いてしまう。
それを知っているから急いで出たのに、きょろきょろ辺りを見渡してもその姿は見当たらない。

嘘でしょ……? いくらなんでも早すぎない……!?


「先輩、待って」

「雪杜くん」


遅れて出てきた雪杜くんに、手首をきゅっとつかまれる。