今日は荒巻さんがフライトから帰ってくる日だ。

「話をした方がいいって言われたけど…」

まあ、形だけだから彼から離婚を言い渡されても文句は言えない。

昼のピークも終わって掃除をしていたら、
「宮脇さん」
と、聞き覚えのある声に名前を呼ばれた。

「竹内さん」

竹内さんだった。

「空いてる席へ…」

「いや、今日は食事にきた訳じゃないんだ」

竹内さんはそう言うと、スーツの胸ポケットからスマートフォンを取り出した。

「実は、宮脇さんに聞きたいことがあって…」

竹内さんはスマートフォンを動かした後で、私に画面を見せてきた。

「えっ…!?」

その画面を見た私は驚いた。

「えっ…竹内さんって、その…」

「そう、“ルシフェル”なんだ」

私を遮るように、竹内さんは言った。