「楽しみだな」


そう言う彼の声は弾んでいる。


「そうね……」


彼は本当に祭を楽しみにしている様子だ。


「おれの勇姿、見てろよ」


次は、どの作業を行うんだっけ。


「……どうして?」


指が震える。


「参加するんだ。条件を満たしたから」


残りの作業を全部、放り出したい。


「ああ、そうだったわね」


この場から立ち去りたい。


「おまえも一緒に行こうぜ」


この地から遠く離れたい。


「考えておくわ」


あなたと共に。


「早く始まらないかなっと」


そんな事が言えたら。


「ずっと言っていたものね」


そんな事が出来たら。


「平気だって」


彼は明るく笑う。


「えっ?」


わたしは、どんな表情だったのだろう。


「全部、済ませたら戻る」


いつも通りの彼の笑顔が歪んで見える。


「だから待っていろ」


祭なんか大嫌い。