泣かないでと言われましても、そんなの無理です。
私のために、命を危険に晒してまで探してくださるなんて。
私、また能力を使ってしまったのでしょうか。
私の願いのために、皆様を危険に晒してしまったのでしょうか。
いいえ、同じ空間に居ないと、効果は持続しないはずなんです。
でも。
……分かりました、お義姉様を信じます。
私の能力が通じなかった唯一の方ですもの。
そのお義姉様が保証してくださるんですものね。
そ…れが罰、ですか?
ギフトブレイカーで、魅了を壊すだけ?
そんな、そんなことで皆様納得されますまい?
皆様の関係を滅茶苦茶にしましたのに。
嫌な思いを、たくさんさせてしまいましたのに。
そうですか、皆様も…
ありがとう、ございます。
もう、なんと申し上げたら良いか…
いいえ、できたら王都には戻らず、平民としてここに居たいです。
元々私は向こうの世界では平民でしたし、こちらの暮らしの方が性に合っています。
聖女の称号はあっても、私にはもう魅了以外の能力は無いはずです。
こちらの世界に来てすぐの魔獣の大規模侵攻で、封印に全て使われたはずです。
分かるんです、何となく。
ですからここで、妃殿下、皇太子殿下、側近の方々の守る国を、一臣民として私なりに支えていきたいのです。
ーーそして、やっと気兼ねなく人を好きになれるなら、私の身の丈に合った平民の方だといいなと思います。
恋をして、結婚して、家族を作って…
そんな贅沢ができるなんて、思ってもみませんでした。
……ええ、困ったことがあれば真っ先に『お義姉様』にご相談いたします。
ほら、この街にも伝書便はありますし。
皇太子殿下のワイバーンでしたら、1日でお義姉様を連れて来てくださるでしょう?ふふっ。
私もお義姉様が大好きですわ。
もちろん、お義姉様や公爵様、奥方様、お義兄様が許してくださるなら、私も家族の一員として皆様の幸福を祈らせてくださいませ。
皆様に何かあれば、私もお役に立てるなら、いつでも駆けつけます。
ーー家族、ですから。
さあ、皇太子殿下がきっと待ち侘びていらっしゃいますよ。
私はここに居ます。
いつでも会えますから。
お義姉様ーー皇太子妃殿下。
どうか、どうか、お幸せに……
fin



