夕焼けの音

「じゃあ、言ってよ。私、何でも作ったのに」
「俺そこまでオマエに求めてねーし」
さっきから、洸さんの口調がいつもと違う。
もっと柔らかで、優しくて、オマエなんて言わなくて、ちゃんと澄花ちゃんって囁いてくれていて……。

「だって、これから私、洸さんの奥さんになるんだよ? 遠慮なんかいらないでしょ」
半分涙声になっていた。
そのことに気づいてか、洸さんは視線を私の目に向ける。
「奥さん……?」
鋭く私を見据える。
「子ども育てていくんでしょ? 一緒に。家庭を持ってくれるんでしょう?」

「いつ、誰がそんなこと言った?」

――すーっと、全身に冷たいものが走った。

それは、彼の冷酷な言葉が、そのまま私のなかを駆け巡ったようだった。
「え……。だって、あかちゃん、産んでいいって」
「それは俺の精子のもんだし。この世に産みだす許可は俺が出さなきゃいけないし。中絶ってちょっとなんかの罰がくだるみたいで嫌だったし。でも、俺はオマエと一緒に家庭を持つ気、ないよ」