「もういいよ」
無理矢理テンションを上げて話しかけた私を、ぴたっと彼は制する。
そしてテレビをぴっと消した。アナウンサーも消え、この部屋には、ふたりだけの息遣いになった。
重い空気だ。なにか、嫌な予感がした。
「飯は、もういい」
「だっていつも洸さん、食べてたじゃない」
いつもばくばく、大きなお口で、旨いも不味いも言わなかったけど、ちゃんと平らげててくれた。
「それは、腹が減っては戦はできぬ、だから」
ちょっと閉じ気味の目で、私の首許辺りを見る彼。
「い、戦?」
「空腹でセックスすると、貧血起こすんだよ、俺」
「は、あ?」
「オマエの料理、和食ばっかでさあ、田舎料理って俺苦手なんだよ」
「でも、奥さんはいつもイタリアンとかフレンチとかしか作ってくれないっていうから」
「それは俺が好きだから」
裏って、このことか。真実は、裏にあったのか。
私は彼のその真実に気づかないでいた。
行くはずもない眼球の奥に、コンタクトレンズが裏側に行ってしまった感覚。それを必死に取ろうと指で掻く自分。かく。あがく。
無理矢理テンションを上げて話しかけた私を、ぴたっと彼は制する。
そしてテレビをぴっと消した。アナウンサーも消え、この部屋には、ふたりだけの息遣いになった。
重い空気だ。なにか、嫌な予感がした。
「飯は、もういい」
「だっていつも洸さん、食べてたじゃない」
いつもばくばく、大きなお口で、旨いも不味いも言わなかったけど、ちゃんと平らげててくれた。
「それは、腹が減っては戦はできぬ、だから」
ちょっと閉じ気味の目で、私の首許辺りを見る彼。
「い、戦?」
「空腹でセックスすると、貧血起こすんだよ、俺」
「は、あ?」
「オマエの料理、和食ばっかでさあ、田舎料理って俺苦手なんだよ」
「でも、奥さんはいつもイタリアンとかフレンチとかしか作ってくれないっていうから」
「それは俺が好きだから」
裏って、このことか。真実は、裏にあったのか。
私は彼のその真実に気づかないでいた。
行くはずもない眼球の奥に、コンタクトレンズが裏側に行ってしまった感覚。それを必死に取ろうと指で掻く自分。かく。あがく。



