夕焼けの音

ちゃんとするから、って言ってくれたじゃない。

急須から湯気が立ち上る。私のなかの、少しの怒りの蒸気のようで、私は思い直して蓋をする。

ねえ、あかちゃん。
自分を落ち着かせるかのように、ひとつの命を撫でる。

洸さんも、色々大変なのかもしれない。
奥さんと別れることとか、私と住む新居探しとか、諸々。
抜かりない大人の洸さんのことだから、きっとちゃんと話を進めてくれているはず。

私との、未来の物語。

そうよね。きっとそうよね。

奥さんにも、色々男の事情ってものは話せない時もあるわよね。
うん、そうよね。

私はしばらく待ってから、湯飲みにお茶を注いで、ちいさなトレイに載せて部屋に入った。
「洸さん、お茶ですよ」
「ああ」

――やっぱり、なにかが、おかしい。

私は疑念を浮かべつつ、彼の前にお茶を置いた。
だけどそれに手を伸ばさない彼。

「あの、ご飯、食べてくでしょう? 今日は定番だけど、肉じゃがとね、冬瓜の……」