夕焼けの音

……なんか、様子がおかしい。

いつもはにこにこで、今日なにがあった? 学校はどうだった? と話を聞いてくれて、うんうん、と頷いてくれていた。

そしてそのまま汗を流すだけのシャワーに入り、ご飯を食べ、私を食べる、というコースだった。

だけど今の洸さんはなんか……なんか、ひとを寄せつけないオーラを放っている。

私はそれを打開すべく、自分から話しかけた。

「あのね、妊娠12週に入ったよ。つわりも治まってきた。お腹もほんの少し、ぽっこりしてきたんだよ。触ってみる?」

彼は私をちらっと見た。
「お湯、沸いてるんじゃない?」
そうとだけ言った。
「ああ、ごめん。ありがとう」

ぽこぽこという沸騰音は、微かにキッチンから聞こえていた。
でも別に急ぐことはないと思っていた。指摘されたから、私はお腹を抱えて、よいしょっと立ち上がる。

コンロの火を止める。急須にお茶の葉を入れる。お湯を注ぐ。しばらく待つ。

……子ども、産んでいいよって言ったのは、洸さんじゃない……。

そんな恨み言が、こころのなかに生まれる。