夕焼けの音

私はそこで顔を上げた。

ポーカーフェイスの彼が続けた。

「俺ちゃんとするよ。学生じゃないんだし」

ちゃんとする……その科白にまた涙が出る。

堕ろせよ、知らないよ――そう言われると思ってた。
だけど洸さんはどこまでも大人だった。

私はお腹を撫でる。
今まで疎ましく思ってたのに、急に愛おしく思う。
あかちゃん。私と、洸さんのあかちゃん。
産んでもいいのね。未来は明るいのね。

「風邪ひくなよ」

そう言って洸さんは、ベッドの下でさっきの私のように乱れている服を拾って、そのままシャツを着せてくれた。
洸さんに、全部まるごとすっぽりと包まれて、幸せな気分だった。

とてもとても幸せだった。

結婚というものも、悪いものじゃないのかもしれない。
今までチャペルで見てきたカップルも、それなりに幸せな生活を送っているのかもしれない。

そんな思いが湧いた。