夕焼けの音



――おかしい。
そう気づいたのは、バイトの予定を書き込もうと手帳を開いた時だった。

生理が来た日は、スケジュール欄にちいさく×印をつけている。
その×が、しばらく書きこまれていない。

洸さんは基本的には行為の時にケアをしてくれていた。基本的に、ではあって、例外もあった。
私は洸さんに流れをまかせたままだった。危機管理ができていなかった。

あの温泉旅行の時はどうだったっけ……夢中だったし、何回もあったから、直接液を注入することはなくても、ブツを直接挿入はあったかもしれない。

そんな不安を抱えたまま、いや、逆に払拭しようと思って、今日も洸さんを受け入れた。

「なに、今日は激しかったね」
ベッドの上で、終わったあとにやさしく口づけしてくれる彼。
その柔らかさに、思わず涙腺が壊れた。
「……できちゃったかもしれない」
反応が怖くて洸さんの顔が見れない。
いるかもしれないお腹に目を落とすだけだった。
「そうか」

彼はいつもと変わらないトーンでそう言い、私のあたまを撫でる。
「産んでいいよ」

「えっ」