4月5日、私谷口玲奈(たにぐちれな)と幼なじみの風野律(かぜのりつ)は、今日から中学生です。



「おくれるよ中学校、入学式に遅れるよ~♪」



「お前が寝坊したせいで遅れそうになってるんだろ!」



そう、その通り…私が寝坊したせいで、中学校に遅れそうなんです。



「ごめんってばりっくん、ほら学校は目の前だよ!」



さすがに初日から先生に怒られたくはないから、急がなきゃ。



勢いをつけて走り出すと、つまずいてしまい、転びそうに。



「どいてっ、りっくんっ」



その時、私のくちびるにりっくんのくちびるが…



ふれた。



ドキドキしたし恥ずかしかったけど、それよりも申しわけなさのほうが大きかった。



ファーストキスを奪ってしまったことが、恥ずかしさをうわまわってしまった。



「ほ、ほほほ、ほんとーにごめん、忘れて」



必死に忘れてほしいとお願いしていると…



「わかった。」と、小さな声で呟いた。



予想以上にドライな感じで少しだけがっかりした。
 


すたすたと歩きだしたりっくんの後ろ姿を追いかけながら私は思った。



いやだったのかな?


少しくらいドキドキしてくれたってよかったのに。



なーんて私たちは幼なじみだから、あり得ないよね。



「まってっ、りっくんっ!」



いつも通り接していれば、いつの間にか忘れると思い考えることをやめにした。



その後全力で走ったら、ギリギリ入学式に間に合いました。