今は放課後。
あたしは教室で待っている。
さっき電話をしたんだ。
「愛?珍しいな。」
「ん…あのさ、一回だけでいいから…叶えてくれないかな?」
「…何を?」
「一緒に…帰りたいな。
あたしを送ってほしいな…」
「……いいよ。そのかわり…」
ガラガラ―――
「俊次…ありがとう。」
「別にいいし。じゃぁ、帰ろっか?」
誰もいない廊下。
暗くなった空。
そう、みんなが下校するまで待っていたんだ。
誰にも見つからないように。
それが条件。
「星だ…綺麗だね。」
「うん…愛寒くないか?」
そう言って、あたしに俊次のマフラーを巻いてくれた。
なんだか今日は、優しいね。
「ありがとう。」
あたしは今、初めて幸せだと感じた。
俊次の二番目でよかったと思えた。
「え…俊次?」
「いいじゃん、別に。」
ぎゅっと握られた手から俊次の温もりが伝わってくる。
あたしの決心が…揺れちゃうよ。


