‐「あ、お父さん、あれ、取って!」

「あれは木苺だよ。
酸っぱいぞ」

「ありがと~!」

「お父しゃん、ゆきちゃんにも取ってぇ!」

「舞雪(まゆき)はまだダーメ」

幼い頃に、父親に取ってもらい食べた木苺は、とっても甘酸っぱくて涙が出た。

「な、酸っぱいだろ?」

滅多に笑わない父親が笑ったのが嬉しくて、茉白(ましろ)は木苺をまた食べた。

「あ、こら」

「えへへ」

今、思うと1番幸せだった頃の話。