「もうっ!東堂君ったら、からかわないでよ。」

「からかってなんていない。
俺、本気だから。」

確かに彼は真っ直ぐな瞳をしていた。
でも、どう考えてもありえない。
彼は20代で背も高いし、今どきの若者って感じでかっこいい。
片や、私は小汚いおばちゃん。
やはり、冗談か罰ゲーム以外には有り得ない。



「皆さん、聞いてください。」

立ち上がった樹は、大きな声でそう言った。



「と、東堂君、なにやってんの?迷惑だよ。」

「俺は、今、この三井恵理子さんに告白しました。
今日から、俺達は付き合います!」

恥ずかしくて、私は顔から火が出そうだった。
周りも驚いてるのか、何人かの人がまばらな拍手をしてくれただけだった。
くすくすと笑ってる人もいる。



「東堂君、早く座って。」

「俺が本気だってこと、わかってくれた?」

なんとも言えず、私はただ曖昧に笑った。



「今日から、三井さん、いや、恵理子は俺の彼女だ。」

樹は、笑いの意味を承諾だと思ったらしい。



「あのね、東堂君…」

「恋人同士なんだから、今からは樹って呼ぶこと!」

「え……」

強く反論することも出来ず、結局は、樹に押し切られた形で、私達は付き合うことになってしまった。