雨上がり、また想いだせるように。



「僕は神様じゃないから、前野を過去には戻せない。それにたとえ、戻したとしても、そこには過去の前野がいる。前野の願いを叶えることは出来ないから、せめてと思って前野が一番会いたがっていた人のいる世界に連れていった」


前野さんの一番、会いたがっていた人が虹空くんということなんだ。



「でも、虹空はそうじゃなかった。幸せな家庭を一瞬にして壊したのが前野だったからだ」



場面が再び変わる。


前野さんは夢の世界の中をひたすら歩いていた。私と同じように初めてこの世界に来たときは何も分からない。道も人もここがどこなのかさえ。ゆういつ、私と違うところをあげるなら、天気が雲ひとつない晴れだということだろうか。


前野さんは歩いて、歩いて、やっと一人、この世界に住んでいる人を見つけた。



「あの、ここはどこなんですか?」




前野さんは頭をかきながらニコニコと笑って聞いた。だけど答えは返ってこない。

 
なぜなら、その一人は虹空くんで驚いて声も出せない状態だったから。



「あの、どうしましたか?」



前野さんは返ってこないので聞き返す。やっぱり、虹空くんのことを忘れているようでまさか、会いたかった人が居るなんて気づいていない。



「……あ、いえ何もないです。あなたの名前は?」



怪訝そうに顔をしかめながら、何事もなかったかのように笑顔を顔にうかべて虹空くんが聞く。その笑顔はぎこちなく、口は笑っているのに目は笑っていなかった。



「前野安里です」



前野さんが自分の名前を名乗った瞬間、光に包まれ、次に目を開けた時には濃い霧の中に私達はいた。


男の人は開けていた白い箱をしめた。