雨上がり、また想いだせるように。




「初めは新しいことが覚えられなくなる。そして、次第に過去のことも忘れていき、記憶のつじつまを合わせるがために作り話をし、自分に置かれた状態が分からなくなっていく。最後は意欲がなくって昏睡状態になってしまう。昏睡状態を防ぐ方法は飲酒量を減らすこと。でも、それを前野は出来ない」



触れられなくてもいい。肩にそっと手を置くようにしてみる。


ストレスや孤独感から逃げるためにお酒を飲む。その方法は前野さんにとって、逃げる手段。だけど、それが逆に彼の身体をむしばんでいく。


前野さんの姿が薄くなって消えていく。


次に見た、前野さんは病院のベッドの上にいた。


何かをするわけでもなく、ただただぼんやりと天井を眺めている。その姿からは何を考えているのかさえ、想像することが出来ない。


前野さんのぼんやりとした目がどんどん閉じていく。その瞬間、場面が切り替わり、私達は霧の中へいた。


今横にいる黒い男の人が前野さんに尋ねる。



『前野安里、あなたの欲しい物、願いは?』



そして、小さな声で前野さんはこたえた。



『……過去に戻りたい』と。



でも、どうして前野さんは“過去に戻りたい”と願ったのに、過去ではなくて夢の世界に居るのだろう?



「どうして前野さんは夢の世界にいるんですか?」