雨上がり、また想いだせるように。



写真を胸に抱く。『ごめんよ、ごめんよ』と懺悔(ざんげ)しているお父さんの姿が薄くなっていく。


次にはっきりと見えたお父さんの姿は、お世辞でも良いという生活はしていなかった。


机の上は洗われていない大量のコップ。床にはビー ルの缶、お惣菜のプラスチックの容器。だいぶ放置しているのだろう。アルコールの独特の匂いと残飯の匂いがリビングに漂っていて顔をしかめてしまう。


でも、お父さんはそんな匂いにも慣れてきているようで椅子に座って何事もないかのようにお酒を飲んでいた。


その姿は、変わり果てていて、どことなく弱っているようだった。



『どうして俺がこんな目にあわないといけないんだよ!』



机をドンッと叩く。するとコップは振動してガチャガチャと音をたてる。



『もう、どうすればいいんだ。俺は忘れたくないんだ……』



涙を流し、頭を抱える。


お父さんはどうしたのだろう。忘れたくないって一体何を?
そもそも忘れるとはどういうことか?



「あの、忘れるって……?」



隣りにいる男の人に聞くと、彼は部屋にある棚の上から三番目の引き出しを開けて、そこから何かの紙を「これを見て」と渡してきた。


紙を見ると、そこには“前野安里”と書かれていた。