雨上がり、また想いだせるように。



『今日であなたとは他人だから。あと、養育費、慰謝料三百万きっちり払ってね』


とげとげしい声が聞こえる。恐る恐る目を開けると、そこには虹空くんのお父さんとお母さんがリビングの椅子に座って話をしている様子が広がっていた。


私の身体はもちろん、透けていた。右の方を見ると私の直ぐ側に男の人が立っていた。


あまりの近さに驚いて声を出しそうになったが、その瞬間、机を叩いたような大きな音が耳に入ってくる。

 
お母さんが机の上に家の鍵を叩きつけるかのように置いた音だった。



『さようなら。この家で一生後悔してなさい。こーくんには絶対会わせないから』



お母さんはそう言いのこし、重たそうなスーツケースをガラガラと運んで出ていった。


バタンっと玄関のドアが閉まる音がする。お父さん、ただ一人になったリビングには無駄に大きく響いた。


お父さんは悔しそうに膝の上で両手を握りしめる。


誰しも、言葉に表すことの出来ない後悔、やるせない気持ちで胸がいっぱいになったとき、きっと何かにあたりたくなるだろう。


お父さんも例外ではなかった。


棚にあったものを全て床に叩きつけていく。パリンパリンと色んなものがに割れて床に散らばっていく。


お父さんは棚にある全てのものを床に叩きつけたあと、恐る恐る何かに手を伸ばした。


それは、三人の家族写真だった。お父さんの瞳から涙が一粒一粒、写真に落ちて染みていく。



『あぁ、俺はなんであんなことをしたんだ……。こんなに幸せだったのに』



大切なものは失ったあとに初めて気づく。お父さんはそれをひしひしと実感しているようだった。