雨上がり、また想いだせるように。


 
「……夢」



ボソッとしている声。聞き取るのが不可能に近い。



「あの、もう一度……」


「ここは君の夢の中だよ、雨」



この人が急に何を言いだしたのか、一瞬で理解することは出来なかった。


でも、いきなりこんな霧の中に放り込まれている。会ったこともない人が私の名前を知っている。そのことから、ここは夢であると頭の片隅で理解できるような気がした。



「そうですか……」



辺りが沈黙に包まれる。


そして、眩い光が霧を切り開き、元々あった花や木が顔を覗かせた。   


どれくらいの時間が経ったのか。沈黙の中、口を開いたのは正体の全く分からない男の人だった。



「雨は、欲しい物ある?」


「……欲しい物?」



男の人は両手を大きく開いて話し始める。



「そう!『これが食べてみたい』とか、『あれをやってみたい』とかそういう願いじゃなくて、普通だったら絶対に叶わない願い。君の欲望」



初めて言葉を交わしたときの彼が嘘かのように、大きな声でハキハキと話している。



「君だってあるでしょう。消えて欲しいと願うくらい憎い人」



”消えて欲しい”、その言葉を聞いた瞬間、頭の中に浮かんだのはお姉ちゃんだった。


小学生のころの醜い気持ちがよみがえってくる。