「私にお見合い相手なんて必要ないわ。せっかく慶都さんならとお受けしたのに、向こうから断ってくるなんて。本当に失礼だし、あんなこと二度とごめんだわ」


あの時の悔しさは忘れられない。


この私とのお見合いを断るなんて酷すぎる。


「麗華、お前のことが心配なんだ。私は、母親みたいにはいかないが、ずっとお前の幸せを願ってきた。お前の母親も、今のお母さんも、ずっとそれを願っている。それに、彩葉もだ。みんなお前を大事に……」


「話はそれだけ? 何度言われても仲良くするつもりはないから。結婚は……今はまだわからない。でも、私の人生なんだから好きにさせてちょうだい。私のことは気にせずに、お父様は彩葉さんと雪都を大事にすればいいのよ!」


無性に腹立たしい思いが私を包む。


黒い雲が胸に広がって、ものすごく嫌な気分。


仕事が上手くいったのに、この悔しい気持ちはいったい何なの?


私は、新色の口紅を握りしめながら、グッと唇を噛み締めた。