ブー…ブー…ブー…
深瀬のスマホに見たことある名前が見えた
「ごめん、ちょっと電話出る」
「うん…」
「もしもし…
…
届いた?
うん…うん…
…
今日片付けて、休み中に手続きする
…
そんなことないやろ
…
うん…うん…そーなん…」
私の知らない深瀬が
目の前にいる
雑誌をヒモで縛りながら
聞いてないフリをしてた
私と話してる時と違う話し方
違う声のトーン
聞き慣れない関西弁混じりの言葉
「うん、うん…
お父さん大丈夫なん?
…
うん…ならよかった
あんまり無理するなよ」
会話の所々に優しい言葉
お父さん倒れたのに
今ふたりのことでごたごたできないよね
やっぱり私が口を出すところじゃなかった
ホントにふたりしかわからないことなんだ
「ほんまに?
あー、そーなん…
…
うん…うん…
また不動産屋行ったら連絡するけど…
…
あー…わかった…」
深瀬がこの前まで付き合ってた人
どんな声なのかな?
電話の向こうで
どんな顔してるのかな?
深瀬は?
今どんな顔してる?
深瀬の顔、見れないけど
きっと優しい顔をしてる
「うん…どーやろ…
…
うん…今いるよ……うん…
…
うん…うん…うん…そーやね
…
んー…また…
…
うん、わかった…じゃあ…」
電話が終わって部屋が静かになった
私にはもぉ言うことない
言う権利ない
いいタイミングで電話がきたのかもしれない
深瀬も何も言わなかった
さっきの話
忘れたかな
忘れてほしい
なかったことに…
「深瀬
コレ縛ったけど、こんな感じでいい?」
今の電話にも
さっきの話題にも
わざと触れなかった
「うん、ありがと」
「コレは?
このダンボールに入れるの?」
「あとオレやるからいいよ」
もぉいらないって言われたみたいで
ちょっと辛くなった
さっきの話
電話の元カノの声
深瀬はどぉ思った?
たぶん深瀬の頭の中は今
元カノのことでいっぱいだと思う
何を考えてるかわからないけど
なんとなく私に背を向けて
ダンボールに本を入れ始めた
深瀬
後悔してる?
元カノと別れたこと
まだ間に合うよ!
なんて簡単に言ってしまったけど
きっと簡単なんかじゃない
深瀬
後悔してる?
私に再会したこと
まだ間に合うよ
私…
私…
「草薙ちょっと休憩しなよ
あそこに飲み物…」
「深瀬、私、帰る…
…
ごめん…深瀬に…
深瀬の気持ちわかんないのに…
…
余計なこと言って…ごめん…
…
やっぱり、昨日…帰ればよかった」
まだ間に合う
今いなくなれば
「え…なんで?
助かってるけど…
一緒に古本屋行こうって言ったのオレだし…
…
え…
草薙…」
今帰れば
まだ…



