いつもより早く目が覚めてしまった次の日の朝。
 まだ閉じてしまいそうな目をなんとか開けて起き上がる。ちょうど良かった。昨日浴び忘れたシャワーを浴びる時間が十分にある。眠い目を擦りよたよたと洗面所へ向かえば髪をセットする後輩くんと目があった。

「おはようございます。先輩」

「おはよ……ゔ?」

 パンツ一枚のその姿に、鍛え上げられた腹筋。その筋肉質な身体に異性を意識してしまい朝からうるさいくらいに高鳴る心臓。自分にはないその腹筋が目に焼き付いて離れない。その腹筋触らせてください!なんて変態じみたこと言えないしどうしてそんなピンクのパンツ履いてるの?なんてツッコむ自信もない。素早くジャージに身を包み飛び出していく後輩くん。

「あ、僕そろそろ朝練あるんで行きますね。先輩も気をつけて」

 いってらっしゃい。とオウム返しで返事をし右手を小さく振って見送れば、ようやく平穏な朝の時間が訪れた。意識してはいけないと思いながらも意識してしまう。むしろ意識してはいけないと思えば思うほどかえて意識してしまう。そんなモヤモヤを熱いシャワーで流していく。

 平均的に見た彼はほんの少し小柄で、友だちの弟がということも加わってか男性独特の威圧感を感じず、男性が苦手な私でも接しやすく感じていた。しかしやはり男は男。少し陽に焼けた肌も、筋肉質な身体も、低い声も。全て意識してしまう。あぁ、特に腹筋は頭の中から離れない。これは重症だ。
 髪を乾かしながら鏡の中の自分と見つめ合う。ーーーー私は後輩くんが好きなのかもしれない。可愛くなりたい。
 女の子が恋をしたら可愛くなりたいと思うのは当然のことだ。