「本当は甘いもの好きじゃないくせに」

「え。なんでわかるんですか?」

 この数ヶ月の生活で春くんの好みはなんとなく分かってきた。生クリーム系のケーキは苦手。だけど卵をふんだんに使ったカスタード系のタルトやシュークリームは好き。プリンも生クリームを使用した甘々系のものは苦手だがシンプルな窯出しプリンは好んで食べている。最近は最初から2人分買うようになったが春くんは食べないものは食べなかった。これが冷蔵庫からなくなるスイーツから分析して出した答え。

「愛してるからよ」

 そうプリン片手にドヤ顔で言えば参ったと言わんばかりに春くんは抱きついてきた。

「僕の負けです。先輩」

「勝った!」

 そう喜んだのも束の間。よいしょっと言う掛け声と共に浮かび上がる身体。

「春くん?」

 ソファに降ろされこの一瞬で私は悟った。やっぱり春くんには敵わないな、と。

「美味しそうなプリンですね。僕にも味合わせてください」

 そっと顔にかかる髪を耳にかけられて、頭の後ろに回された大きな手。ゆっくり重ねられる唇。角度を変えながら、何度も何度も口付けを交わされる。

「はっ」

 身体が酸素を求めて口を開けばそれを狙っていたかのようにすかさず舌を絡まれた。

「春くんっ」

 とんとんと、背中を叩けば満足そうに顔を上げる春くん。

「これは僕にはちょっと甘すぎですね」

 ペロリ、彼が唇の周りを舐める仕草にすらキュンとしてしまう。

「で、でしょ? だから言ったじゃない。春くんの好きなプリンも買ってあるよ」

 彼が退いたすきにそそくさとソファから立ち上がり冷蔵庫からプリンを二つ取り出し、一つを春くんに手渡した。

「ありがとうございます」

「いえいえ」

 2つ目のプリンも開封し頬張る。

「先輩は本当に甘いものが好きですよね」
 
「うん。だいすき」

「食べたらカロリー消費しないとですね」

 ベッドで、と耳元で囁かれる不適切なワードに心臓が勢いよく鳴り響く。

「春くんっ!」

「僕、健全男子なんで」

 あっという間にプリンを平らげた狼さんが次の獲物を狙うように私の瞳を掴んで離さない。

「先輩」

「春くん」

 ーーーー愛してる。