「先輩はスーパーでバイトしてるんですよね?」

「そうだよ」

「レジですか?」

「いや、品出し。レジは苦手で」

「あ、なんかそんな気がします」

 口元を手で抑えくすくすと笑う後輩くんに怒りたいのに、怒りたいのにある出来事を思い出して笑いが込み上げてしまう。

「実は一回レジにも立ったことがあるんだけど。お金の引き出しが何回閉めても閉まらなくなっちゃって」

 ふふふっと笑い話をすれば先輩らしいです、とお腹を抱えて笑う後輩くん。

「笑い事じゃないよー! 壊しちゃったんじゃないかって凄い焦ったんだから」

「面白いです、先輩らしくて」

「もうっ」

「お待たせしました。醤油ラーメンと塩ラーメン、餃子です」

 そこに運ばれてきた熱々の麺に目が釘付けになってしまう。

「うわぁ、美味しそう」

 胡麻油の香りが食欲を刺激する。

「いただきます!」

「いただきます」

 つい熱々の麺を豪快に啜ってしまった。こういう時女性はもっとお淑やかに食べるべきなのだろうか。豪快に麺を啜る後輩くんの様子をそっと伺うとぱちり、目があった。

「……一口食べますか?」

「あ、いや大丈夫!」

 また異性だと意識してしまった自分に身体が熱くなる。暑いのはラーメンのせいだ、と言い聞かせ熱々の麺を口いっぱいに頬張る。
 やはりラーメンは豪快に啜ってこそ美味い食べ物だと私は思う。



「っぷはぁ! 美味しかった!」

 最後に水をぐいっと飲み干せば火照った体に水分が染み渡っていくような感じがする。

「ふふふ。やっぱり僕は先輩が好きだな」

 くすくすと笑う後輩くん。お腹もいっぱいで幸福感に包まれていた私の耳が違和感を感じて立ち上がる。

「え?」

 今、好きって言った?

「さて、行きますか。先輩」

「え、ちょっと」

「もうすぐイルカショーの時間ですよ」

「そ、そうだけど」

「イルカは嫌いですか?」

「す、好きだけど」

「僕も好きです」

「っ!」