難病

「夏美、おはよう。」
モデルかって思うくらいの容姿に身長。
彼女である私でも毎日思わずくらりとしてしまう。
たわいない雑談を交わしながら、笑顔で過ごせる。
ーずっとそうだといいな。
無理だってわかってるけど。

小6の冬に、私は10万人に1人の格率の難病にかかった。
母は嘆き崩れ、いつも冷静な父も取り乱し、妹は、地獄絵図でも見ているかのような顔をして茫然と座っていた。
チク、タク、チク、タク。
暗い雰囲気の病室に、時計の音だけがこだましていた。
「余命1年」
それが私に残された時間。
だからそれまでに悔いの無いように、一生懸命生きよう。
そう覚悟した。

「きゃああああああああああ!!!」
春休みのはじめ、私は鏡を見て絶叫した。
髪が、抜けた。
私の髪は、本当にきれいで、大切なものだった。
なのに、それが消えた。
私はあふれる涙を手で拭いながら決意した。
『ウィッグをつけて生活する』ことを。