抱きしめられたことを知り、私は思わず息を止めた。


異性にこんな風に抱きしめられたことは初めてで、伝染するぬくもりと鼓動に脈拍が急上昇するのが分かった。


煌くん、いくら人通りの少ない住宅街だからって恥ずかしいよ。


誰かに見られたらどうしよう。



「ゆづ、好き。よそ見しないで、俺だけ見て」



そんな一抹の不安は、煌くんの言葉にかきけされた。


好きな人に“好き”って言われること。それだけでこんなに心が乱されるんだ。


嬉しくてたまらなくて、私も早く好きって返したいのに、自分の大きな心音に阻まれてうまく言葉が出ない。



「元々、煌くん以外眼中にないから大丈夫……」



結局好きって返せなくて、小さく返答すると煌くんは私の顔を覗きこんで笑った。



「また真っ赤になってる、かわいい」



顔どころか耳まで赤く染まっている私。


煌くんは指先で撫でるように耳に触れて、そして優しい眼差しと穏やかな笑みを浮かべた。