「あの人、村田の兄弟?」



煌くんは遠くなっていくその後ろ姿を見つめた後、首をかしげて訊いてきた。


無表情に変わりはないけど、憑き物が落ちたように穏やかな顔に戻っている。


私の知ってる煌くんだ。よかった、これ以上赤面して恥を晒さなくてよさそう。



「うん、3番目のお兄ちゃん。光は4人兄妹の末っ子なんだよ。幼馴染なんだ」

「ああ、なんだ……」



凱くんとの関係を伝えると、肩の力を抜いてため息をついた。


まるで安心したみたい。だとすれば何にあんなに警戒して怒ったように怖い顔をしたんだろう。



「ごめん、嫉妬した」

「……嫉妬した?」

「うん、勘違いだったから大丈夫」



その答えは案外すぐに返ってきたけど、信じられなさすぎて訊き返した。


煌くんが嫉妬なんてするわけない。女関係に無頓着なのは、1年生から見てきてよく知ってるし。