勢いよく頭を下げて書類一式が入ったファイルを彼女の前に差し出す。


なかなか受け取ってくれなくてそっと顔を上げると指先が震えていた。


お願い、早く受け取って。



「ま、待って、なんで震えてるの?私がいじめてるみたいじゃーん」



すると、どこか焦ったような声で先輩はクラスメイトの顔色を見ながら書類を受け取った。


大きな声で話しかけたのが功を奏したみたいだ。



「そっか、先生に話通してくれたんだありがと」

「はい、では失礼します」



目的を達成したため、すぐさまUターンする。


教室にいる人たちが私を見つめる視線が怖い。


いじめられていた時は、こうやって遠巻きから悪口を言われていた。


さっと目を逸らした先で、ハンドボール部の先輩たちが私を見ていることに気が付いた。


何か言われそうで怖くて、会釈してすれ違う。



「あれ、煌の彼女だろ。なんか雰囲気変わった?」

「オドオドしてるとか言われてたけど、全然しっかりしてるしかわいいじゃん」



悪い想像しかできなかったのに、彼らの口から飛び出したのは私を褒め称える内容だった。


自分の努力が報われた気がして、心が満たされていくようなぬくもりが広がっていくのを感じた。