「あ、ごめんね。話が横道に逸れちゃった」



お母さんはハッと我に返って笑顔を私に向ける。



「それで柚月ちゃんを見て直感したの、この子が煌を変えてくれたんだ!って。
それでずっと話したいと思ってたたけど、仕事が忙しくて全然時間取れなくて。今日は会えてラッキーって感じ」

「私も、お会いしたいと思っていたのでよかったです」

「こちらこそ、ずっとお礼を言いたかったの。
息子を選んでくれてありがとう。柚月ちゃんのおかげで煌との関係もずいぶん良くなった」



お礼だなんてとんでもない、そう答えようとしたら、お母さんの目が憂いていることに気が付いた。


夫に不倫されて離婚して、被害者なのに親子関係が悪化して、でもそれを相談できる人もいなくて、どれだけ苦しかっただろう。


彼女も煌くんと同じ苦しみを味わって、そこからようやく抜け出せたんだ。


強い人だ、そのまっすぐな目は煌くんに似ている。



「これからもよろしくね。今度一緒にご飯行きましょ」

「はい、楽しみにしてます」



彼らの苦しみを知り、涙がこみ上げる。


だけどここで涙を見せるべきではないと、無理やり笑顔を作って大きく頷いた。