カレシが嫉妬を覚えたら

初めての表情に後ずさりすると、煌くんは繋いだ手にぐっと力を入れて、意を決したように口を開いた。



「ゆづ、今日泊まってほしい」

「……」



言葉を理解したのち、私は完全にフリーズした。

過分な供給に思考がショートしてしまったのだ。



「ゆづ?」

「……ごめん、なんて?」

「泊まってほしいって言った。どうせ母さん、今日は帰って来ないから」

「何言ってるの煌くん!?」



いわゆる解釈違いにもほどがある。煌くんは無気力で無頓着で、絶対こんなこと言うタイプじゃないのに。



「なにもしないから。そんな気力ないし、ゆづのこと大事だから嫌がることは絶対しない」



畳みかけて念を押す煌くん。


でも、いくら優柔不断の私もお泊りの提案は承諾できなかった。


泊まる前提で来てないから、何も準備できてないし。