「与坂」


「ん〜?」


「お前も良い奴に出会えればいいな」


後ろに体をのけぞらし、下から与坂を見上げる。


キョトンとした顔をして、


「良い奴、ねぇ。どこにいるのかな」


乾いた笑い。

どこか諦めたような目。


犀川もだけど、与坂もかなりモテるほうだと思う。



「ま、俺が言えた義理じゃねえか」


体を起こそうとすれば、額を手で抑えられ、耳元で囁かれる。


「ね、灯織ってセフレとか居ないでしょ」


その類い、やっぱ本物にはバレるよな。


「女の子、性処理だけで使える人じゃないよ、灯織は」


耳元から顔を離して、髪を耳にかけながら俺に微笑む。


「だから、柿谷慎矢くんと揉めたんじゃない?」


ずっと思ってた。

与坂は頭がいい女だ。


「お前、柿谷と寝た?」


「嫌よ、ヤリチンなんか。童貞の方が可愛くて好き」


ああ、なんか、


「ふっ」


やっと素顔の与坂を見た気がした。


「でも、灯織は特別。いつでもウェルカムだから」


「お前は素の方がいいな」


「ふふ、惚れた?」


「惚れた惚れた」


「あー、適当に答えた〜」


良い奴に出会えるといい。

俺に言えた義理じゃない。

俺でさえ、環の言うような、環よりも俺を愛してくれる人間に出会えるなんて思えねえ。