「…灯織」
教室に今度こそはと向き直したのに、名前を呼ばれて振り返る。
「まだなんかあんの…」
ちゅ
「慎矢には、キスさせんなよ。結構灯織、隙多いから」
……
俺は、この感情をどうすればいい。
こいつを、殴り殺したいこの気持ちを。
こいつを素直にさせると、リミッターが外れてしまうことはよーく分かった。
「もうお前なんか知らん」
教室の扉を力任せに開ける。
バンッ
クラスメイトがビクッと反応するが、俺の姿を見て少しホッとして見せる。
減るもんじゃねえ。
減るもんじゃねえが、雛鳥じゃねえんだから頻繁につつかれりゃ気分が悪い。
馬鹿にされてるとしか思えねえ。
「灯織ぃ?最近ずっと機嫌悪いねえ」
後ろの席の与坂が俺の肩をゆさゆさと揺する。
「お前さ、好きでもねえやつにキスされたらどうする」
「ビンタだね」
物理。
まあ普通そうだよな。
「なあに、あたしが消毒してあげよっか」
「いらん」
「え〜、あたし唇気持ちぃらしいよぉ?」
「その情報もいらん」
「あは、灯織はそのドライさが落ち着くなぁやっぱり」
何やら楽しげに笑っている与坂。
こいつは、言葉に本気さがない。
犀川とは違う。

