「七種、ありがとな」
「うぉい!俺は!?」
「お前うるさくしてるだけだろ。失せろ」
動きまでうるさい幸大。
「友達に失せろはねえだろ!!!」
「井筒、帰るぞ。」
嵐のように現れ、帰って行ったな。
静かになった。
そう安心していれば、カラカラとまた扉が開く音がする。
「耀介ぇ、送ってけ」
ベッドに舞い戻り、目を瞑ったままそう言えば、直ぐに返答が来ず目を開ける。
そこに居たのは、耀介ではなく、頬を腫らせた男。
あーだりぃ。
起き上がって、そいつの元へ歩く。
「耀介なら今いねえよ。喧嘩か」
仕事の時間だ。
「……」
無言か。
胸ぐらを掴まれたのか、胸元のシャツがシワになっている。
「そのぐらいなら俺が手当て出来る。座れよ」
「……いい。自分で手当てしにきた」
「へえ。じゃあ、薬の場所分かんのかよ」
俺より10cmは高いその目を横目で見て、手を止めて手のひらを天井に向け、ハッと鼻で笑ってやる。
分かるわけが無い。
頻繁に怪我してるやつか、俺かぐらいだ。
「いいから黙って座っとけ。」
それでも尚、座らないそいつを無視し、薬や道具を揃える。
左頬に1発食らったって感じか。
相手は左利き。
……もしかして。
「相手分かったわ。あれだろ?柿谷慎矢(かきたにしんや)」
視線が強くなった気がした。

