環をあんな顔にさせた。
幸せになって欲しくて、今ここに居るのに。
タンタン……
足音が聞こえて、体育座りをして顔を埋めていた俺は、少し顔を上げる。
足……
俺の前で止まってる、足。
ダメだ、俺は今、泣いてる。
顔、上げらんねえ。
「誰」
「……俺」
声で分かった。
けど、
「何」
なんでここにいんの。
ここ、使ってんのか。
「お前、様子おかしかったから」
ホントこいつ、かなり俺の事見てるよな。
「何お前、俺のストーカーなのか?俺の事見すぎだろ」
「視界に入ってくる」
「そうかよ。だとしても着いてくる義理ねえだろ」
どっか行けよ。
今、お前の事考える余裕ない、皇。
ストン、と俺の隣に座る皇。
なんでそこに座るんだよ。
「義理なんかない。体が動いた」
「ホント……お前意味分かんねえ」
もう知らねえ、お前なんか。
「…っ、ぅ」
泣いた。
皇のことなんか構わず。
皇も何も言わないから。
少し落ち着いて、顔上げる。
瞼、また腫れてんだろうな。
帰ろ。問いただされるのも面倒だ。
涙を拭って隣を見れば、俺と同じ姿勢で規則正しく呼吸をしてる皇。
前髪を少し上げてみれば、目を瞑っていて。
「寝てんのかよ」