「なあ、神尾さん、すげえイケメンだったな」


興奮気味に俺に言う幸大。


「もうなんか、笑ってハグしてるの見たら、新しい扉開きそうだったよ!」


与坂も違う意味で興奮している。


「灯織、別人みたいだった。」


じっと俺を見つめる犀川。


「付き合ってないのか」


ハードル競技やってるのに、一人棒高跳び始めやがる七種。


「振った」


ここまできたら、もう全部言おう。

環は、異性愛者だけどな。


その言葉に全員固まり、一斉に叫んだ。


「はあ!?え!?どういうことぉ!?」


「まままま、ま、待てよお前ら、落ち着け」


与坂の叫びに、珍しく幸大が制する。


「こ、告白されたってことだろ」


七種までポンコツ化してる。


「あの、あのイケメンが、灯織を……」


手が震えている犀川。


「……ふっ」


思わず笑ってしまう。

え?

全員俺を見て戸惑う。


「嘘だよ。真に受けんなバーカ」


席を立って教室を出る。


屋上への階段をのぼり、突き当たりの踊り場に座り込む。


「笑えてるかな」


帰ってから、そればかり考える。

環は泣いていないだろうか。

1人で、辛くないだろうか。


でも、俺が心配したら、それも今は環にとっては辛いもので。

俺は、まだ、消化できてない。