丞さんの頭は平和だってことは分かるしな。
それでいいなら、別に他人が咎めることじゃないだろうし。
「俺の親、デキ婚でさ。あんま、記憶ねえんだけど、俺の事可愛がってた方の親から俺の事愛してない方の親が引き離してさ、まあ色々あって施設転々として、何を考えたか耀介は俺を拾って孤児院に無理やり連れてきた。」
雑誌を見ながら話す。
分かってる。
どんどん美容室の温度が下がっていくこと。
「ヤリたいのは別にいいけど、人生何が起こるか分かんねえから、無責任なことはすんなよ」
出してもらったブラックコーヒーを口にする。
「…そんなこと考えながら、俺の話今まで聞いてたの?」
恐る恐る丞さんが俺に聞く。
「一回り年下の俺から、ありがたーいお言葉だよ」
「ふふ、だーいぶ重たい言葉だね。どうする?丞さん、これから勃たなくなっちゃうかもよ」
「それはご愁傷さまだな。」
「和さーん!!!この子達、大分ブラック!」
……まあ本当に、うろ覚えの記憶だけど。
別に店の中が空いてるわけじゃない。
だからこの会話を聞いてる人は結構いる。
「じゃあ、君、今孤児院で暮らしてるの?」
和さんが俺に聞く。
「いいや、耀介の名義でマンション借りてる」
「一人暮らしか」
「ん」

