「ごめんね、性格悪くて」


性格が悪いんじゃない。

環の世界は広いようで狭い。

親が、生みの親二人だけだと里親を断り続けたように、自分の大切なもの以外は拒絶する傾向が環にはある。


それに加え、今は入退院を繰り返して、ろくに友達も作れない。

だから今、環の世界には、俺と耀介が色濃く居座って、それ以外はないも同然。


そうか。


環が前に病室で言っていたことは、自分に言い聞かせている部分もあったんだな。


これからの、俺の可能性を潰さないように。


「いいだろ別に。俺が嫌だったらすぐ止めてる」


「……ひおは、僕にどこまでも甘いね」


「環をダメにする甘さは持ってない。まあいいか、で甘くしてるつもりはない。環の俺への甘さと同じように甘くしてるつもり」



環は人格者だよ。

ただ、怖がりなんだ。

俺を家族のように思っているからこそ、自分の言葉に責任が重くのしかかってる。

そう環は思ってる。


俺を壊さないように、潰さないように、幸せになれるように。

自分のワガママで道をそらさないように。

ホント、親みたいな。



俺は別にそうして欲しいわけじゃない。

環は俺の親でもなければ、環の人生だってある。

完璧じゃなくていい。


だからこそ、俺がちゃんとしなきゃいけない。