「好きにしろ」


俺は目を瞑る。

そんなふうに育てた覚えはない、か。


確かにな。

耀介は荒れた言葉遣いはしない。

人を傷つけない。

でも、間違ったことはしっかり叱る。


ずっと、孤児院で見てきた。

孤児院の職員よりも、俺らの傍に寄り添っていた。


けれどいつも、俺らより寂しそうだった。



『だからね、ひお。僕らで耀兄を大切にしてあげよう?』



そう約束した。

俺の初めての友達で、親友。

あいつと約束した。


ガバッと起き上がり、まだ、ベッドに腰をかけている耀介の後頭部に手を当て、引き寄せる。


ぎゅうっと力いっぱい抱きしめる。


いつも飄々としていて、それでいて寂しげで。


あいつならもっと上手く、こいつを大切にできるんだろうけど。

俺にはこれしか分からない。


俺がしんどい時、あいつがしてくれたように。



「なんかあったのか」



聞いたって、俺には分からない。

きっと、分からない。


親にも必要とされず、憎まれていた俺になんて。



『ひお、ひおはね?僕や耀兄に愛されるために生まれてきたんだよ』



あいつがそう言うなら、そうだと信じたい。



『親が全てじゃない。分かるだろう?僕だって、君や耀兄に愛されるために生まれてきたと思わない?』