「あ、あの、あたし戻ります」


少しずつ曇る空気を感じとり、犀川が立ち上がる。


「そう。氷嚢返すの、いつでもいいからね」


「分かりました。灯織、ありがと」


「おー」


犀川が出ていってから、耀介の手を振り払う。


「環に、久しぶりに会いに行ったんだってね」


「ああ」


ぼふっ、とベッドに寝転がる。


「なんかあったの」


「発作みてえなやつ、久々に出た。ただそれだけ。……はっ、よくよく考えりゃ、俺も相当面倒くさいやつだよな」



目を瞑り笑う。


「……どこが?もし、灯織が環に甘えることが面倒くさいやつって変換されてるなら、それは違うよ。自分を慕ってくれる人が、甘えてくれるのは、ただ可愛いだけだよ。灯織はそうじゃなくても、甘えられない子なんだから。」



環は、面倒くさいなんて思わない。

それは分かってる。

けど、俺がこんなんでいいわけじゃない。



「まあ、学校で倒れるのは、何があるか分からないからないに越したことはないけどね」



「分かってる」



「何度も言うけど、仕事でここに居るわけだけど、仕事をこなしてくれれば、普通の高校生として過ごしてくれて構わないんだからね?灯織」