「まあ噂だ。1年の単位だけ取って2年次は違う学校に籍置くこともできるだろうしな。中卒は避けるんじゃないか」


でも、少しでも希望を与えなきゃ、こいつらを見ていられないんだ。



「明日卒業式だけど、来るかな」


犀川が呟く。


「全員、体調不良以外は出席しなきゃだもんね。」


与坂が自信なさげに言う。


「来たとしても、俺らどうしたらいいんだろうな」


眉間に皺を寄せる幸大。


「普通にしてるのが、1番だ」


『俺が頭を下げるのが筋だ』


あの誰よりも男前な友達は、覚悟を決めた。

どう転んでも、俺たちが見捨てることの無い、最高の友達。



_____



「え!?」


「あれって、そうだよね……」


卒業式の朝。


特に気崩されているわけではない制服に、黒の革製のスクールバッグに白のスニーカー。


ポケットに手を突っ込み、歩くその男。


髪は見ないうちに少し伸びて、軽くひとつに結ばれている。

男で髪を結んでる奴はほぼ居ない。

だからか、不思議な色気が漂う。


まあ、灯織は男と偽ってそれが通ってしまう中性的な部分がある。


余計に異色だ。


「待って、久しぶりの灯織くん、かっこよすぎて…」