「まあ噂だ。1年の単位だけ取って2年次は違う学校に籍置くこともできるだろうしな。中卒は避けるんじゃないか」
でも、少しでも希望を与えなきゃ、こいつらを見ていられないんだ。
「明日卒業式だけど、来るかな」
犀川が呟く。
「全員、体調不良以外は出席しなきゃだもんね。」
与坂が自信なさげに言う。
「来たとしても、俺らどうしたらいいんだろうな」
眉間に皺を寄せる幸大。
「普通にしてるのが、1番だ」
『俺が頭を下げるのが筋だ』
あの誰よりも男前な友達は、覚悟を決めた。
どう転んでも、俺たちが見捨てることの無い、最高の友達。
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「え!?」
「あれって、そうだよね……」
卒業式の朝。
特に気崩されているわけではない制服に、黒の革製のスクールバッグに白のスニーカー。
ポケットに手を突っ込み、歩くその男。
髪は見ないうちに少し伸びて、軽くひとつに結ばれている。
男で髪を結んでる奴はほぼ居ない。
だからか、不思議な色気が漂う。
まあ、灯織は男と偽ってそれが通ってしまう中性的な部分がある。
余計に異色だ。
「待って、久しぶりの灯織くん、かっこよすぎて…」