歩き出す俺に2人も着いてくる。


「弓木のいい所か。男の俺らからしてもかなりあるぞ」


「うんうん、犀川がお前に惚れる理由も分からんでもない。まあ、お前より俺の方がいい男だけど?」


「ないだろ」



「うおい!!!」



笑いながら教室に向かえば、入口に皇が立っていた。

俺に気付いて、何故かじっと見ている。


「ん?灯織?入んねえの?」


「井筒」


俺と皇が無言で見つめ合っていることに、七種は気付いたらしい。


「へ?」


アホ幸大は気付いてないらしいが。


俺としても、無視して教室に入ればいいんだが。

仕事としては、ここで目をそらすのが正解かは分からない。


それにしても、見てるだけで、本当になんも言わねえなこいつ。


だる。


「先入ってていいぞ」


七種と幸大にそう言えば、少し心配そうに2人は教室に入っていく。


「何」


仕方ない。こちらが聞かなきゃこいつは永遠に話さない気がする。

俺の柄じゃないが。


……にも関わらず、皇は目線を逸らしやがった。


はあ!?

んだこいつ。


「用あったんじゃねえのかよ」


はあ、とため息をついて、隣に立つ。


「……分かんねえ」


そうボソリと呟いて皇は教室に入っていく。


「…はあ?……分かんねえのはこっちのセリフだ」