身長は丞さんより少しだけ低い。

身体の華奢さを隠すのが上手い。


男装のプロと言ったところか。


「ちょーだい」


ポンポンと丞さんの肩を叩いて、丞さんから合鍵を受け取ったそいつはスタスタと俺の隣を通り過ぎ、カウンターの椅子に座る。


ふわっとフードを取って、


「薫さん、ジンジャーエールください。氷ちっちゃいやつで」


ミキの声と、ミキの笑い方。


それでいて見た目は男。


「…了解、いつものな」


少し驚いた顔をした市東さんだったが、すぐに柔らかく口角を上げた。


それを見て、俺に視線をずらし、ふっ、と鼻で笑う。


「灯織」


「ほら、これ合鍵。」


合鍵を摘んで俺の前に出す灯織。


「世話んなった」


真っ直ぐに俺を見る。


「感謝してる」


ズキズキと心臓の当たりが痛む。

その合鍵を受け取れずにいる自分。


「んな、悲しい面すんな」


立ち上がり、俺の頭を撫でる。


「俺が勝手に居座っただけだろ。だから、出てくのも俺の勝手だ。」


目を合わせられない。

実感が湧いてくる。


また、


「もうお前は一人じゃない」


俺の思考を読んだようにそう呟いた灯織。


灯織の言動の意味が分からず、灯織の目を見れば、酷く優しい目をしていて、目頭が熱くなった。