「灯織」


そんな中で、言葉を発することが出来るのはじいちゃん。



「お前はお前を責める必要がない。俺達にはある。」


力のある瞳に何も言えなくなる。


「お前が母親に連れられて家を出たのは、4つの時だ。その時のお前に何が出来るって言うんだ。それに比べ俺や彰仁には、行動する余地があったはずだった。天馬も大学生になった年で、耀介も中学生の年だ。」


ああ、どうしたら


「お前がどれだけ過去を悔やむ必要は無いと言ったって、俺たちと同じような学生時代を過ごす権利がお前にはあったはずなのに、それを取り上げたのは紛れもなく俺たちだ。俺たちには、俺たちを責める必要がある。」


この人たちの苦しみを取り除けるのだろう。


「確実に、天馬や耀介とは違う、決して良いとは言えない環境でお前は育った。俺たちの知らない世界も見てきただろう。」


鉄格子の扉のある部屋。

それはきっと、ここにいる人間は知らないだろう。


「それがお前に必要なものだったとは、思わん。」


そんなこと、言ったって


「だからといって、お前の必死で歩んできた道を否定するつもりはない。だから、俺たちが俺たちを責めることだけは、見逃してくれないか」


正直、嫌だ。

俺のせいで苦しむ人がいるのは。

家族が苦しむのは。