俺が出れば教室の中は途端に騒がしくなる。
周知の事実ってところだった。
少しの間、廊下で時間を潰そう。
死角にしゃがみ込めば、パタパタと足音が聞こえた。
「お、居た。大丈夫か?」
七種と幸大。
俺の隣に幸大が座り、前に七種が座る。
「犀川、泣いてたけど、ありがとうって伝えてくれって」
「ん」
目を瞑る。
俺にはない、純粋な感情。
告白される度、いくら俺でも罪悪感はある。
「お前、本当に彼女作らねえの?セフレだけでいいとか、そういう?」
幸大が言いづらそうに聞く。
「じゃあ聞くけど」
根本の話だろ。
「俺が犀川好きじゃねえのに付き合ってさ、あいつは幸せになるの?」
少しの沈黙から、幸大が口を開く。
「それ、犀川に伝えてやれよ」
「何のために。好きになってやれねえのに、優しくして誰が得すんの。もっと傷つけるだけなんじゃねえの」
そう呟けば、頭に何かが乗る。
目を開ければ、七種が柔らかく笑って俺の頭に手を乗せている。
「お前も、ハッキリ断るの、辛かったんだな」
七種の手をゆっくり払って、立ち上がる。
「どいつもこいつも、俺のどこがいいんだか分かんねえ」

