「人の幸せは、本人にしか分からない。それは理解できるだろう?特に、灯織、お前ならな」
その言葉にピクッと眉を動かす灯織。
「……うぜえ」
灯織は、まだまだ子供だ。
だからこそ、将来自分で自分を守れるように教えてやらなきゃいけない。
壊してはいけない、俺の宝物。
この宝物を安心して任せる先が見つかるまで。
「……言えよ」
「…?」
「アンタも、仕事したくねえって思った時は言え。」
「…その言葉の意図は」
「俺が一緒にサボってやる」
「……何だそれは」
俺の問いに、舌打ちで返す灯織。
ああ、そうか。
そういう事か。
「ふっ」
「笑ってんじゃねえ」
俺を、この俺を、甘やかしてやると言いたいのか。
「耀介にもしてやってるのか?」
「いや、あいつは数分俺といて、すぐ仕事に戻る。」
「そうか。じゃあ今後、会わせてやらんことにするか。効率が良くないな、その時間は」
「はあ?そこまでするか?」
冗談だ。
「その時間、何をしてくれるかによるな」
「……なんか、オッサンくせえな」
「俺はまだ31だ」