……っ



「お前のことは話が別なんだ。俺と耀介にとっては。」



俺たちが、お前を可愛がる前に、あの男に渡してたまるか。



「んだよ。本当は優しい兄貴だとか、言うなよ?あんだけ俺の事煽っといて」


……それもそうだ。


「あれはお前にとって必要だった。必要だったからこそ、お前は前向きになったんだろう。そうだな、加えるとすれば、真壁丞の存在に感謝すべきだな。お前の手助けになった」



「……そーだな。」


車の窓に肘をつき、外を眺める灯織。


「助けられて、ばっかだな」


少しトーンの低い声。


「貰ったものは返すべきだ。好意的なものも、そうでないものも。それは全て相手のためだとは限らない。その行為そのものが自らの糧となる。」



「好意的なもんじゃねえもんは、返さなくていいだろ」



「今日の味方は明日は敵かもしれない。今日の敵は明日、味方になるかもしれない。人の心は移りゆく。その全てに対応し続けたものが王となる。これからお前が生きる世界では、感情に流されるのは得策じゃない。」



眉間に皺を寄せて俺の話を聞く灯織。



「ま、そんな生活をするのは俺だけで十分だがな。」


ニヤ、と笑って見せれば、ハッと鼻で笑う灯織。


「自己犠牲か?」


「そんなわけないだろう。俺が望む道だ。」


「理解できねえ」