少し、想定の時間より掛かっている。

まあ耀介から聞いている通りなのであれば、許容範囲だ。


美容師達が作業をしているカウンターに座り、和と話していれば、コツ、コツ、と余裕を持った足取りのヒールの音が聞こえてくる。


そちらを見れば、



「サイズぴったりすぎ、キショい」



真顔で俺に文句を付ける女。


緑のドレスに、白い肌、黒く艶やかな髪。

ふむ、スタイルからルックス、流石だな。

ただ、



「口が悪いな」



「なんでてめえが、俺のスリーサイズ知ってんだよ」



「愚問だな」



「いや、答えろよ。やましいんだろ?」



「誰がお前の中高の制服を仕立ててやっていると思っている。」



鳳の人間以外に、お前に触れさせるわけがないだろ。

はあ?と分かりやすく引く灯織。



「……耀介の話はやはり本当だったようだな」



「は?」



『兄さん、もしどうしようもなく灯織が機嫌を損ねたら』



「お前が機嫌を損ねたら、ここに連れてくれば機嫌が直るだろうと話していた。今日は、お前の機嫌が悪くなるのは目に見えていたから先にここを予約した。まさか、ここまでとは思わなかったな」



全ては、後ろから歩いてくる、その男の力なのだろう。