「あはは。本当にひおは僕に甘いね。他の人が今の言葉聞いたら、驚くだろうに。」


愛されてきた人間は強い。

俺と違って、環の親は事故で亡くなった。

その後も里親候補が来たとしても、環は断り続けた。

体こそ弱いが、頭もよく気の利く優しい人間だ。暴れ回る俺と違って、うちに欲しいと名乗りをあげる大人は沢山いた。


けれど、自分の親はこれまでもこれからもあの二人だけだと、頭を下げてまで断った。

環は、俺に愛情を教えてくれた。


『ひおは、お父さんとお母さんがくれた、宝物だ』


そう泣きながら俺を抱きしめてくれた。



「環だけ、知っていてくれれば、それでいい」


「うん。ありがとう。大好きだよ、ひお。おいで」


手を広げる環に近寄れば、ぎゅうっと抱き締められる。

……細い。

また細くなった。

確かに男だから、俺より作りはデカいかもしれない。

けど、細い……。


泣くな、阿呆。

グッと涙を堪える。


「うん、やっぱり、ひおは女の子だね」


「……は?」


「口の悪さは昔から変わらないけど、見た目を男っぽくしてもひおは女の子だ。」


「意味分かんねえ。女なら、なんだっての」


「…ううん、なんでもないよ。ただ、華奢だなぁって」